

食品メーカーにとって、製品の安全性の確保は重要な課題です。
日清食品グループでは、多様な視点から安全性の確保に取り組む「食品安全研究所」を中心とした独自の品質保証体制を築き上げています。
また、各部門では、原材料の調達から、製造、流通、販売にいたるすべての場面に対応した品質保証活動を展開し、安全・安心な製品をお客様にお届けできる体制を作り上げています。
こうした「食の安全」への姿勢は、グループを構成するすべての事業会社で共有しており、それぞれの現場では独自の品質保証活動を展開しています。
2002年6月、日清食品グループでは科学的な根拠によって品質を保証し、お客様にとって安全な食品をお届けするために「食品安全研究所」を設立しました。新しい検査分析方法の開発や調達した原材料の品質調査、調達先の査察、グループ内の生産工場における品質管理体制の確認などの業務を行い、製品開発における安全性チェックという重要な役割を担っています。なお、食品安全研究所は、他部署から独立した社長直轄組織となっています。なぜなら食品メーカーが果たさなければならない「最も重大な社会的責任」と言える「食の安全」について経営意思決定のための情報提供を担っているからです。
また、2005年に設立した「日清(上海)食品安全研究開発有限公司」が2006年11月から本格稼働し、中国における原材料の品質管理体制も強化しています。
お客様から寄せられる製品に関するお申し出情報をすべての関連部署で共有する次世代お客様対応システム「VOICE」の稼働に伴い、2009年4月には、食品安全研究所に食品鑑定グループを新設し、お申し出のうち異物、異臭などのご指摘への分析対応を一元化しました。これによって分析に要する平均日数は5.8日となりました (前年度に比べ4.3日の短縮) 。
11月にはグループ品質保証委員会を立ち上げ、各社に共通するテーマを掲げ、食の安全の確保を日清食品グループ全社の課題として捉える活動に取り組んでいます。


食品安全研究所は2008年4月に試験所および校正機関の能力を認める国際規格ISO/IEC17025認定を取得しました。取得分野は、1.残留農薬一斉分析、2.動物用医薬品一斉分析、3.微生物試験法 (一般生菌数、大腸菌群、黄色ブドウ球菌) の3分野で、「HPLC ※1」による動物用医薬品等の一斉試験法 (畜産物) については、日本国内初の認定取得となります。
これにより、食品安全研究所が「国際標準での品質保証システムの運営が行われている」「国際レベルの信頼性を有する結果を出す分析技術能力を有する」試験機関として外部から公式に認められ、日清食品グループの品質保証体制は国際基準に適合していることが明らかになりました。
※1 HPLC (High Performance Liquid Chromatography)
高速液体クロマトグラフィーと呼ばれ、さまざまな有機化合物の分離や定量のための代表的な手法として、幅広く利用されている技術。
食品安全研究所では、2010年5月に微生物検査の外部精度管理試験を、社内で代替実施できる体制を整え、SARMAPS ※2 という名称の下、年に2回実施しています。このシステムは、精度管理に用いるのが難しい微生物を対象とした点では画期的なものであり、すでに特許も出願済みです。
今後はグループ会社や協力会社に対しても微生物管理を実施できる体制づくりを推進していきます。。
※2 SARMAPS
Food Safety Research Institute's Microbiological Analysis Proficiency Systemの略
食品安全研究所では、高い分析能力を持つ検査手法を独自に開発しており、社外から検査を受託するなど、高い評価を得ています。
原材料に含まれる可能性のある、約500種類の残留農薬、約100種類の動物用医薬品を一斉、迅速に分析できる「NASRAD-600」や、遺伝毒性発がん物質と発がん作用を促進する物質を検査する「NESMAGET」や「NESTUP」、食物アレルギー検査、重金属の一斉分析や放射線照射の確認検査などを活用することで、危害物質の混入を未然に防いでいます。
| 分析システム | 内容 |
| NASRAD-600 | 約500種類の農薬と約100種類の動物用医薬品を一斉・迅速に分析することが可能 |
| NESMAGET | 食品に含まれる遺伝毒性発がん物質を短期間で簡便に検査できる「DNA修復遺伝子発現を指標としたヒト細胞変異原性試験法」 |
| NESTUP | 発がん作用を促進する物質「発がんプロモーター」を短期間で簡便に検査できる「発がんプロモーター短期検出法」 |
| 食物アレルギー検査法 | 遺伝子情報に基づきアレルギー発症の原因になる「特定原材料に準ずるもの」15品目を食品の中から検出する検査法 |
| 食中毒菌群の一斉検査法 | 遺伝子情報に基づき複数種の細菌群を迅速に検査できる3種類の検査法 (特定細菌群迅速一斉検査法・酢酸耐性乳酸菌群検出法・嘔吐型セレウス菌検査法) |
| NASID | 実際に納品された原材料がサンプルと同じものであるかを農薬や動物用医薬品の不純物プロファイルと特定重金属から判定する「原材料同一性判別法」 |

食品安全研究所では、日清食品グループが生産する製品の品質を保証するため、ゲルマニウム半導体検出器式γ線スペクトロメーターを用いた放射性核種分析 (ヨウ素131、セシウム134、セシウム137) による検査体制を構築しました。
関東地方にある日清食品グループの生産工場 (日清食品の静岡工場を含む) と協力工場で、製品に使用する水 (水道水および地下水) と製品をサンプリングし、定期的な検査・分析を行っています。
なお、これまで検査を行ったすべての検体で、放射性物質は検出されていません。
食品安全研究所では、アレルギー発症の原因となる「特定原材料に準ずるもの」18品目のうち15品目については、食品の中から検出する方法を開発し、これを活用しています。
この検査法は、「特定原材料に準ずるもの」15品目の特徴的なDNA配列を含む部分を増幅させて検出し、食品中にその食物が含まれているか否かを判定するものです。現在、特許出願中ですが、検査法のライセンス供与先では一部の品目について他の食品メーカーなどからの受託検査を2006年5月に開始しています。

食品安全研究所では、2003年にDNA修復遺伝子 (p53R2) の発現の仕組みを応用した「ヒト細胞変異原性試験法 (NESMAGET)」を確立しました。これは、食品に含まれる発がん性物質を短期間で、簡便に、低コストで検査できる方法です。さらに、2008年11月には、発がん作用を促進する物質「発がんプロモーター」に特有の変動を示す遺伝子群を発見し、この遺伝子群の発現量の増加を指標として、短期間で簡便に検査できる「発がんプロモーター短期検出法」も開発しました。これらの試験法を活用し、原材料の発がん性に関する安全性情報の集積を進め、安全性のさらなる向上をめざしています。また、これらの試験法は、社外からも依頼試験として受託しており、高い評価を得ています。
近年、中国では急速な工業化に伴い、十分処理されていない排水などによる河川や土壌の重金属などによる汚染が懸念されています。そこで2007年3月より、ICP (誘導結合プラズマ) 発光分析装置による重金属の一斉分析に取り組んでいます。
殺菌を目的とした食品への放射線照射は、日本国内では認められていません。当社では2007年3月より、PSL (光ルミネッセンス) 法や、TL (熱ルミネッセンス) 法による放射線照射の確認検査に取り組んでいます。